リスクマネジメントには被害想定が不可欠

塩谷 暢生(35電化)

(東京都 82歳)


 西浦博・北海道大学教授が新型コロナウイルスの感染防止の行動制限を何もしなかった場合、重篤者が85万人に達するとする試算を行った上で、必要な防止対策を個人的に発表した。これに対し管官房長官は、推定死者数は政府としては公表しません、と述べたという。
 私は西浦教授の対処はリスクマネジメントの正道と評価し、勇気ある行動と称賛したい。なぜなら、リスクマネジメントの要諦「最悪に備える」ためには、最悪の場合の被害額を想定しないと対策は不完全となってしまうからである。我が国はかつて、被害想定は国民を惑わすだけという理由で被害想定をしなかったし、想定した場合でも公表はしなかった。
 しかし、現在は例えば、「富士山が噴火したら、3時間後に首都圏の都市機能は麻痺する」「関東大地震では死者不明10.5万人以上」「河川の洪水浸水想定区域図(洪水ハザードマップ)作成」など、行政は被害想定を公表し、その上で対策を講じるというように進歩してきている。新型コロナで政府が推定死者数を算出しているのに公表していないとすれば、それは責任回避のためであり、実効性のある対策が出てくる筈はない。国民をもっと信頼していただきたい。
                            2020.4.22

 上記は、政府の新型コロナ感染防止対策に業を煮やし、某新聞社へ投稿したものですが、少し感情的になっているようで採用にはなりませんでした。せっかくですので、皆さんにだけでも笑っていただこうと公開しました。
 西浦教授は人との接触を8割抑制できれば、新たな感染は大きく減らせると試算しました。安倍政権はこれを踏まえ接触8割削減を呼びかけたことから、8割おじさんとか言われているようですね。通行や営業が解禁になり、プロ野球も無観客ながら開幕し、明るさが見えて来ました。しかし、彼は日本の流行の現状を野球にたとえ、「1回裏が終ったところ」と言っているそうです。 スリル満点の第二波、第三波のコロナ戦争とはいかないよう祈るばかりです。
 今回のコロナ対応で私が最も気になったのは、行政の劣化やデジタル化の遅れが明らかになったことです。紙とハンコでおろおろするばかりで、日本の生産性の悪さを象徴しているように思いました。
 OB会での皆さんとの会食を楽しみにしています。
                             2020.6.22